膝蓋前滑液包とは、膝のお皿(膝蓋骨)のすぐ前にある、液体で満たされた袋状の組織です。この滑液包は、膝の曲げ伸ばしなどの動きをスムーズにするクッションのような役割を果たしています。この滑液包に炎症が起こった状態が、膝蓋前滑液包炎です。
膝蓋前滑液包炎の原因
膝蓋前滑液包炎の主な原因は以下のとおりです。
- 繰り返しの刺激: 長時間正座をしたり、膝をついて作業をしたりするなど、膝に繰り返し圧力が加わることで、滑液包に炎症が起こります。これが最も一般的な原因です。例えば、庭師や床職人など、膝をつく作業が多い職業の人に多く見られます。
- 外傷: 膝への直接的な打撲や転倒などによって、滑液包が損傷し、炎症を起こすことがあります。
- 感染: まれに、細菌感染によって滑液包に炎症が起こることがあります。この場合は、痛みだけでなく、赤みや熱感も伴います。
- その他の疾患: 関節リウマチや痛風などの基礎疾患が原因で、滑液包炎が引き起こされることもあります。
膝蓋前滑液包炎の特徴
膝蓋前滑液包炎の主な症状は以下のとおりです。
- 膝のお皿の前の腫れ: 膝のお皿のすぐ前に、柔らかい腫れが現れます。初期段階では痛みを感じないこともありますが、進行すると痛みが出てきます。腫れは、液体が溜まっているため、ブヨブヨとした感触があります。
- 痛み: 腫れが大きくなるにつれて、痛みを感じるようになります。特に、膝を曲げたり伸ばしたりする際に痛みが増強します。また、患部を押すと痛みを感じます。
- 熱感・赤み: 細菌感染が原因の場合は、患部に熱感や赤みを伴います。この場合は、早めに医療機関を受診する必要があります。
- 可動域制限: 腫れや痛みによって、膝の曲げ伸ばしがしにくくなることがあります。
膝蓋前滑液包炎の診断
膝蓋前滑液包炎の診断は、主に以下の方法で行われます。
- 問診: 症状や発症状況、既往歴などを医師が詳しく聞きます。
- 視診・触診: 膝の状態を視覚的に確認したり、患部を触ったりして、腫れや痛み、熱感などを確認します。
- 画像検査: 必要に応じて、レントゲン検査やMRI検査などを行い、他の疾患との鑑別を行います。感染が疑われる場合は、滑液包の液体を採取して検査することもあります。
膝蓋前滑液包炎の治療
膝蓋前滑液包炎の治療は、原因や症状の程度によって異なります。
- 保存療法: 軽度の場合は、安静、冷却、圧迫、挙上(RICE処置)などの応急処置を行います。また、消炎鎮痛剤などの薬物療法や、サポーターなどの装具療法を行うこともあります。
- 穿刺排液: 腫れがひどく、痛みが強い場合は、注射器で滑液包の液体を抜くことがあります。
- 手術療法: 保存療法で改善が見られない場合や、感染が原因の場合に行われます。手術では、滑液包を切除したり、膿を排出したりします。
膝蓋前滑液包炎の予防
膝蓋前滑液包炎を予防するためには、以下のことに注意しましょう。
- 長時間正座を避け、膝をつく作業をする際には、クッションなどを使用する。
- 運動前後のストレッチを十分に行い、膝への負担を軽減する。
- 肥満の場合は、減量を心がけ、膝への負担を軽減する。
膝の前面に腫れや痛みを感じたら、早めに整形外科を受診するようにしましょう。早期の診断と適切な治療が大切です。